1972年創業、型枠工事の現場から広がる事業の輪
福岡県で半世紀以上にわたり型枠工事を手がけてきた株式会社成冨建設は、先代会長が27歳で立ち上げた会社だ。「型枠は芸術である」という創業時からの信念が、現場の隅々にまで根づいている。公共工事をはじめとする地域貢献度の高い案件を主軸に据え、安定した受注を維持してきた。近年は異業種への参入も進めており、型枠大工の領域にとどまらない事業展開を推し進めている。
個人的には、「業界の教科書をつくる」という構想が印象的だった。社内で蓄積してきた施工ノウハウや技術的知見を体系化し、次世代へ引き継ぐための書籍制作を計画しているという。九州北部を拠点とする地域密着型の経営で転勤がなく、腰を据えて働ける点も採用面での訴求力になっている。事業拡大に伴い新たな人材を迎え入れるフェーズに入っており、成長途上の組織ならではの勢いが感じられる。
スタッフの8割が未経験スタート——現場で鍛える育成の仕組み
在籍スタッフの80%が建設業未経験から入社しているという数字は、育成体制の厚みをそのまま物語る。先輩社員がマンツーマンでつき、型枠の組み立てや段取りといった基本動作を一つずつ教え込んでいく方式を採用している。資格取得の支援制度も整備されており、働きながら専門性を高められる環境が用意されている。月2回のミーティングで成果や課題をチーム内で共有し、個人の成長スピードを全員で把握する運用も機能している。
「早起きを習慣にする」「まず一つ資格を取る」といった小さな目標設定からスタートできる風土があるという声が社内では目立つ。チームごとに1億円の売上目標を掲げつつ、将来的な独立を志す人材も歓迎するスタンスを明確に打ち出している。挑戦すること自体を評価する空気があるからこそ、未経験者でも臆せず飛び込めるのだろう。独立支援まで視野に入れたキャリア設計を提示している建設会社は、この規模ではそう多くない。
型枠大工か配送ドライバーか——入口が2つある職場
株式会社成冨建設では、型枠大工と配送ドライバーという2種類の職種で人材を募集している。型枠大工は現場での組み立て・解体・段取りが中心で、経験豊富な職人から技術を直接吸収できる。一方の配送職は倉庫から工事現場への資材運搬が主な業務で、積み込みは専門スタッフが担当するため体力的な負担は抑えられている。オートマ限定免許で対応でき、女性ドライバーも活躍中だ。
10代から50代まで幅広い年齢層が在籍し、髪型や髪色も自由という職場環境はこの業界では珍しいと感じる利用者も多い。配送ルートは九州北部が中心で、定期的に安全講習や運転技術の研修も実施されている。普通免許さえあれば始められる間口の広さが、異業種からの転職組にも支持されているようだ。
技術を「芸術」と呼ぶ組織が目指す先
型枠施工を単なる作業ではなく芸術として捉える姿勢は、株式会社成冨建設の根幹にある思想だ。創業者が大工としての腕を磨き上げた経験が原点となり、精度へのこだわりが現場単位で徹底されている。こうした技術観は若手への指導場面にも色濃く反映されており、仕上がりの美しさを追求する意識がチーム全体に浸透している。
ある現場スタッフは「先輩が型枠の収まりを何度もやり直す姿を見て、この仕事の奥深さを知った」と話していた。業界内でのリーディングカンパニーを目指すという経営方針のもと、技術開発と育成システムの両輪で組織力を底上げしようとしている。革新と伝承を同時に走らせるという難しい課題に、この会社は正面から向き合っている。


