塀の向こうは、もう波打ちぎわ
冷水御坊・飯盛山 了賢寺のいちばんの目印は、その立地にあります。境内の北側は紀伊水道の黒江湾に面し、寺の塀から海までの距離はわずか4〜5メートルしかありません。南には紀伊の山々がせまり、その細い土地を国道42号線とJRきのくに線が縫うように走っています。山と海に挟まれた風光明媚な地形の只中に本堂があり、「日本で最も海に近い寺院」とも呼ばれてきました。参拝を終えて振り返れば、山門の先にそのまま海が見えます。
参拝者が書き残した、この寺の顔
訪れた人の声が、この寺の輪郭をよく伝えています。ある参拝者は「歴史と由緒のあるお寺」と記し、すぐ裏が冷水浦漁港であることに触れていました。飾らない一言ですが、漁港と背中合わせに建つ本堂という珍しさが、そこににじんでいます。
別の人は「海に一番近い本願寺派のお寺」と書き、信心獲得の御文にゆかりのある寺だと言い添えていました。立地の面白さと、蓮如上人以来の由緒。この二つが並んで語られるところに、冷水御坊・飯盛山 了賢寺という寺の性格が表れています。海辺の景色だけでなく、教えの歴史もまた、この土地に確かに刻まれてきました。
四季それぞれの、海辺の境内
写真館のページには、春夏秋冬それぞれの境内が収められています。冬の澄んだ空気、秋の色づき、夏の光、春のやわらかさと、海のそばならではの景色が季節ごとに入れ替わります。法要のない日でも、潮の匂いのなかで静かに時間を過ごせる場所です。個人的には、これほど海と一体になった寺は和歌山でもそう多くないと感じました。
JR冷水浦駅から西へ約250メートル、歩けば5分ほどで山門に着きます。阪和自動車道の海南ICからも車で5分で、境内に駐車もできます。思い立ったときに、海と寺を一度に訪ねられる近さです。門信徒でなくても、どうぞ気軽に足を運んでください。


